ちらしがき

ちらしの裏に書き散らすように、気の向いた時に気の向いたことを。

『Frozen』と『アナと雪の女王』の違い

『For the First Time in Forever(邦題・生まれてはじめて)』の日本語版歌詞を見て気づいたけど、
この曲でも、エルサが父親の教えを繰り返してるところがなくなっちゃってるのかあ。
というか、父親の影響を匂わせる部分が消えてエルサだけの言葉になってしまってる。
字幕版と吹替版両方見た人が、吹替だと父親のエルサへの抑圧がわかりにくくてエルサが一人で悩んで勝手に閉じこもったように見える、と言ってたのがわかった。
『Let It Go』で父親の言葉がなくなってるのは知ってたけど、まさかこっちでもだとは思わなかったな(^^;)。

エルサが父親の指示で閉じこもり始めたことや父親がエルサに手袋をつけて力を抑え込むよう言ってたことはさすがに残ってるだろうけど、
あれだけだと、いかに父親の影響が大きかったか、エルサがいかに父親の言葉に縛られ続けていたかはちょっと伝わらないよなー。
父親の影響って結構重要なファクターだと思うんだけど、翻訳した人はそうは取らなかったんだろうか。


うーん、でも子ども時代のエルサの様子からして、エルサが自分の力に怯えるのは明らかに親の影響ですよね?
アナと遊んでいた時はもちろん、部屋に閉じこもり始めてからも最初の内は、特に自分の力を恐れてるような様子はないし。
思わず力を使って窓枠を凍らせてしまってはっとした顔になったりはしてたけど、恐怖の表情ではなかったと思う。
どちらかといえば、親にやったらだめって言われていることをやってしまってどうしよう、って感じに見えた。
そして、その後父親に手袋をはめられてる時も、父親と一緒に、力を隠さなければいけない、って唱えてる時も、不満そうな様子。
あの時のエルサは、まだ自分の力やそれを使うことを怖がってはいなかったように思う。

だけどその数年後のエルサは、自分の力が抑えられないことに怯えていて、
その恐怖のあまり父親に触れられることさえ拒絶してしまう。
この変化は、部屋にこもらされて父親の教えを聞かされ続けるうちに、
エルサの力への恐怖や力を疎む気持ちが父親からうつってしまった、父親にそういう感情を植えつけられてしまった、
ってことだと思うんだよなー。
だから、エルサが父親の言葉を繰り返しているところはすごく重要だろうし、吹替でも入れるべきだったんじゃないのかな。
まあ、もしかしたら台詞で多少補足されてるのかもしれないけど、
父親の影響が強く表れてるのは主に
『For the First Time in Forever(邦題・生まれてはじめて)』と『Let It Go』の歌詞だと思うので、
そこから完全に父親の影がなくなっちゃってると、父親のエルサへの抑圧を読み取るのは難しそう。


……まあ、辛口なこと言ってしまえば、そういう、抑圧を見て見ぬふりしてないものとしてしまう、というのは非常に日本的だとは思う。
別に日本特有ではないだろうが、日本でその傾向が強いのは事実だよね。
翻訳家の解釈の問題ってより、日本でより受け入れられやすいよう気を回した結果だったりするのかもしれないな……などと邪推してしまったり(^^;)。
ストーリー考察でも書いたけど、ファミリー映画で親から子どもへの(悪気のない)抑圧を描くって結構な冒険だろうし。
アメリカではともかく日本ではそういうのはまだ受け入れられないだろうから、ってことなのかなあ。


そういえば、最初に『Let It Go』の日本語版歌詞と英語版歌詞を比較してみた時、
二曲の違いがいかにもアメリカと日本の違いっぽいな、って思ったんだった。
単体ならそうでもないかもしれないけど、比べてみるとすごく、
『Let It Go』はアメリカ的で『レット・イット・ゴー』は日本的、って印象を受けた。

原曲は激しい歌で、自分を否定し抑圧し続けてきた存在への怒りもあるように思う。
「The wind is howling(風が吠えている)」とか、
「this swirling storm(渦巻く嵐)」とか、
「slam the door(扉を力いっぱい閉める)」とか、
「Let the storm rage on(嵐よ 吹き荒れろ)」とか、
「blast(突風/爆風)」とか、
激しさを感じる言葉の連続だし。
「rage」って言葉は「吹き荒れる」という意味より「怒り」って意味の印象が強いのもあって、
これは怒りの歌なんだな、と思ったんですよね。
映画見る前に何度か聞いてたんだけど、その時に。
歌詞だけでなく歌い方も、激しさや怒りが感じられるものだし。

そう考えると、「You'll never see me cry(あなたが私の涙を見ることは二度とない)」というのも、
もう泣いたりしない、というより、
抑圧してくる相手に涙を見せない、つまり、泣き寝入りしたりしない、って意味に聞こえてきたしなー。
その直後に「Here I stand/And here I'll stay(私はここに立って ここに留まり続ける)」があるので、
泣きながら逃げたり隠れたりただ黙って小さくなって抑圧に耐えているんじゃなくて、
怒りを爆発させて声を上げて堂々と胸を張って立ち上がって抑圧に立ち向かっていく、
という力強い決意や闘志が感じられる。
すごくパワーがあるしパワーをくれる歌、という印象。

そうそう、『Let It Go』を最初に聞いた時、なんか「反抗(革命)の狼煙を上げろ!」みたいな歌だな、という感想を抱いたんでした(笑)。
実際、あまり間違ってなかったんじゃないかなー。
「I'll rise like the break of dawn(私は夜明けのように立ち上がる)」の
「rise」には単に「立ち上がる」って意味だけでなく、
「反抗して立ち上がる」とか「反乱を起こす」って意味もあるようだし。
「夜明け」って言葉自体も、割と革命っぽいイメージあるし。

だけど日本語版ではポジティブさや解放感が強くて、というかそこがほとんどで、
原曲に感じたような力強さや激しさ、怒りは抜け落ちてしまっているように感じる。
歌い方はそれなりに激しいんだけど、やっぱり歌詞が明るすぎる。
その、尖っている部分を丸くしちゃってるようなところが、なんか日本っぽく感じたんだと思う。


『Let It Go』に関して、「no」などの否定語が多い、という指摘と
『レット・イット・ゴー』では否定の言葉がほとんど使われてない、という指摘をそれぞれ別のところで見たんだけど、
その違いに、今書いた“アメリカっぽさ”と“日本っぽさ”というのがよく表れてるかもしれない。
『Let It Go』は、抑圧にノーと言ってありのままの自分にイエスと言おう、という歌だけど、
『レット・イット・ゴー』では前半がすっぱり切り落とされて後半だけになってるんじゃないだろうか。
『Let It Go』には「ノー」というメッセージがあるけど、『レット・イット・ゴー』にはない。
ありのままの自分にイエスと言うためには、まず周囲の抑圧に対してノーと言う強さが不可欠だと思うんだけどなあ。
周囲に何と言われても、何と思われても、自分は自分でいい、
それこそ「I don't care/what they're going to say
(彼らが何を言うかなんて気にしない)」と思えないと、
ありのままの自分にイエスと言うなんてことはなかなかできないよね。

そういえばこの、抑圧してくる相手に「ノー」を突きつける、という『Let It Go』の側面が集約されてるのが、
最後のエルサのドヤ顔……もとい挑むような表情だと思うんだけど、
日本語版だとなぜエルサがあんな表情してるかわかりづらい気がする。
まあ、日本語版だとエルサの行動が理解しにくいのはそこだけではないですが。
ティアラを投げるところは、英語版だと「I'm never going back(もう絶対に戻らない)」
って言ってるのですんなり意味がつかめるけど、
日本語版だと「輝いていたい」だしなー。
輝いていたいだけなら別にティアラ捨てなくていいんじゃないかって謎だった、という感想を見たことがある(^^;)。

個人的にものすごく不満を感じるのは、
最初の方でエルサが父親の教えを繰り返しながら、言い聞かせるように指を振っているところ。
日本語版だとこれも何やってるのかよくわからないんだよなあ。
あの親が子どもに言い聞かせるようなジェスチャーは、正に、
エルサを縛っているものは父親の言いつけだ、というのを表してるように感じる。
歌詞も、「Be the good girl you always have to be(いつもいい子でいなさい)」で、そのまんまずばりだし。
なので、あそこの歌詞ではやっぱり、少しでいいから父親に触れてほしかった。


話を戻しますが、『生まれてはじめて』の歌詞を見るに、
「ノー」というメッセージの欠如は『レット・イット・ゴー』だけの話ではなく、
作品全体がそうなってしまってるんじゃないかな。
『Frozen(原題)』は、抑圧にノーと言ってありのままの自分にイエスと言おう、という話だけど、
『アナと雪の女王』は、ありのままの自分にイエスと言おう、だけの話になっているんじゃないだろうか。
まあ、字幕版ではそうでもない気がするけど、吹替版では多分そうなってる。
だとしたら、それは大分残念なことだと思う。


……もっとも、吹替版見てない私がこういうこと言うのもどうかって気はするんですが(^^;)。
あくまで、日本語版の歌詞と少数の人の感想だけに基づいてますからね。
「見てないくせに勝手なこと言ってんなよ!」というツッコミは謹んで受けます。


余談ですが、『Let It Go』は噛めば噛むほど味が出るというか、
歌を聞いたり映像を見たり歌詞を読んだりするたびに色々な発見があって、ほんとすばらしい歌だと思う。
ここ好きだな、って思う部分が聞くたびに変わるしなー。
もう最初から最後まで大好きです!


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